『城塞』(司馬遼太郎 著)
上中下の三冊あるので、読み初めは「先は長いな」と感じます。
登場人物たちの背景が細かく描かれているからなのですが、
大坂冬の陣・夏の陣へとお話が進むにつれて、
そうした枝葉がつながっていくのが分かります。
それだけ、多くの人がそれぞれに思惑を持っていたのです。
中でも主役の一人として描かれている徳川家康には、
この戦いを仕掛けた当事者として『関ヶ原』の時と同じく野望への執念を感じるものの、
ズルさと周到さは相当なもの。かなり悪役です。
だから読んでいて感情移入できるのは大坂方ですが、
これはこれで内部に問題を抱えている。
諸国からやって来た「助っ人」たちがいくら奮戦しても、
城の中は一つにまとまらない。
そこを江戸方にうまく突かれてこういう結果となった。
やり方はともかく、勝者によって歴史が作られたのです。
その後、日本の中心は江戸に移り、
将軍様の時代が200年以上続き、
明治維新で江戸幕府は倒されても、江戸は東京と名を変え
今へとつながっていく。
もし、冬の陣・夏の陣の結果が違っていたら?
かなり飛躍しますが、現在東京と呼ばれている場所は
こういう都市になっていなかったかもしれない。
あるいは、日本の首都は別のところになっていたかもしれない。
読み終えて、今があるのも歴史の積み重ねであると改めて感じました。

中盤から終盤にかけては真田幸村も登場。
真田丸での戦いなど、大河ドラマの予習にもなりますよ!
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