仕事から帰宅したら、風呂から出たばかりの娘(6)がすっぽんぽんで飛び出してきた。
「お父さん、今日ね、ぐらぐらしてた歯が抜けたんだよ」
それが言いたかったのか・・・・・・子供って、かわいい。
風呂上がりの娘が、封を開けて見せてくれた。中には、マッチ棒の先ぐらいの小さな乳歯が入っていた。
娘は2週間ほど前から、下の前歯がぐらぐらしだして、しょっちゅういじっていた。
いじりたくなる気持ち、よくわかる。でも、いじって取れたらちょっともったいない気分だったりして。
まあ、気になっていたのは確かなので、
「よかったね、これで大人の歯が生えてくるんだよ」と言ってあげた。
そして娘にお休みを言い、お父さんは茹でトウモロコシを食べていた。
すると、トウモロコシの粒が歯に似ていることに気付き、さらに、娘が生まれる前に抜いた親不知のことを思い出した。
~回想~
レントゲンによって、奥歯のわきに埋もれていることがわかった親不知。
痛くないので放っておいたが、痛くなってからでは遅いといわれ、口腔外科にかかって抜いた。
口腔外科という診療科があることすら知らなかったが、待合スペース(大きな総合病院なので科目ごとに待合があった)に行くと、街の歯医者さんと似たような患者層だった。
そして名前を呼ばれ、”工事”が始まった。
肉を切り、埋まっていた歯を掘り出すのだから、痛いのなんの。
しかし、大きく口を開けている中での出来事だから、自分からは見えない。
何か工具のようなものを使い、埋もれた歯を掘り出そうとしているのだけは感じた。
その工具の振動が、すぐそばにある骨に響く。アゴに麻酔はしていたが、振動に麻酔は関係ない。
「骨を削るってこういう感覚のこと言うんだな」と、拷問されているような気分で涙目になっていた。
何分ぐらい経ったろうか。難工事の末、親不知は”発掘”された。
「どうしますか?」と聞かれて、迷わず「持ち帰ります」と答えた。どんな歯が潜んでいたのか、じっくり見たかったから。
~回想終わり~
今日の娘と、考えてることは同じじゃないか。
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